企業

物語と経営

神田昌典氏は小説を執筆するほど多才なのですが、彼は何千社という会社のコンサルタントをしてきて、そこには法則性があることに気付きました。それは、「会社の命運には神話のような物語があって、そのシナリオに沿って進んでいく」ということです。

会社の成長過程を「導入期」、「成長期」、「成熟期」と分けると、試練は3回訪れる、と。これを乗り越えると、起業家は新しいビジネスに取り組むようになります。

第一の落とし穴は導入期の終わりに訪れます。そこでは品質問題・エネルギー不足・方向性の不一致が顕在化します。
第二の落とし穴は成長期の中頃に訪れます。ここでは家庭問題と人間関係の課題が明らかとなります。
男性の経営者であれば妻との関係がぎくしゃくする。よって、外に女性を作ることになります。
子供が非行に走ったり、ひきこもりになる。
何だか夢も希望もないような指摘なのですが、何千社、何万人というクライアントを見てきた人物が予測し、そこに法則があるというのですから、我々は謙虚にその意見に耳を傾けましょう。

第三の落とし穴は成長期が終わり、成熟期に差し掛かる頃です。蝶で言えば蛹の時期です。
この頃、組織の反乱が起こります。
右腕と目し、信頼していた人物が社員数人を引き連れて、顧客データを持ち出して独立し、ライバル会社を作るといったようなことです。

はてさて、これほど波乱万丈な道のりを経なければ企業経営は出来ないのか、もっと順風満帆な人生は歩めないのか、と嘆息する方も多いことでしょう。

神田氏は、これらの課題をクリア出来れば、次の段階に進むことが出来、年商10億円の企業になれる、と言っています。家業から企業に成長出来るのです。しかし、多くの経営者はこれらの課題を解決することが出来ないので、日本の企業の90%は年商10億円を突破することが出来ないと主張しています。
逆に言えば、これらの課題に対する適切な処理の仕方を心得ていれば、その人は複数の企業を経営するビジネス・オーナーになることが出来るそうです。

それと、神田氏は「桃太郎」は企業経営のヒントが満載であると言っています。
桃太郎が鬼退治に旅に出かけようとすると、協力者が現れます。犬、猿、雉です。
桃太郎本人を含めて4者のキャラクターが登場するのですが、それぞれの役割があります。
桃太郎は起業家(軍人)、犬は実務家(魔術師)、猿は管理者(官僚)、雉は統合者(恋人・道化師)の象徴だそうです。
起業したての頃は社長が一人4役を務めるということもありますが、組織として発展し、人を雇うようになると、それぞれの役割を持った人物が会社に集ってきます。
どの人も必要です。必要だから登場するのですが、相性があります。
起業家と官僚、そして実務家と統合者はそれぞれ反発しあう傾向があります。
起業家が新しい事業を起こすと志したら、実務家が必要になります。この人は端的に言えば仕事に命をかけられる人です。必要とあらば会社に1週間でも10日でも寝泊まり出来るぐらいのバイタリティのある人です。
次に業務のシステム化を推進する人物が必要になります。それが管理者です。官僚の特徴とは「それはこういう理由によって出来ない」とNoを言うことです。起業家にとってはそれが時に疎ましいことがあり、あまり嬉しくない存在かもしれませんが、官僚が去ってしまうと、想像がつくと思いますが、ブレーキの無い車になるのです。
システム化に成功しない会社は、その後の成長は期待出来ません。
最後に統合者、まとめ役が必要です。ムードメーカーということですね。
女性であれば起業家の恋人、将来の奥様ということもあるし、男性でしたら面白いことを言ったりやったりする人です。
このポジションも非常に重要でして、結局、会社経営が成功するか否かは、このまとめ役が上手かどうかにかかっているとも言えます。

面白いのは、社長が事業半ばでこの世を去った時に、社長夫人が社長となって事業を引き継ぐケースです。
それまで本など読んだことが無いような人で、周りが「大丈夫なのか」と懸念するのですが、先代よりも事業を大きく飛躍させることが多いそうです。

女は化けるのです。