人物

グーグルの民主主義

ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン。言わずと知れたグーグル共同創業者のお二人ですが、二人の経歴やグーグル誕生秘話、そしてその後の経過を調べていくと、人生や仕事、あるいは会社とはどんな風に運営するのが望ましいか、といった事柄について、実に多くのインスピレーションを得ることが出来ます。

二人はスタンフォード大学の大学院で知り合いました。二人は数学のグラフ理論という分野の博士課程の論文を書くことに専心しており、経営に関してはほとんど興味が無かったと言われています。
しかし、ラリーの半生を綴ったWebサイトによりますと、ラリーはニコラ・テスラの伝記を読んで感銘を受け、彼が非業の死を遂げたことを嘆き、「発明家は発明をするだけでは十分にその使命を全うしたとは言えない。その発明が世に普及するだけの、企業側の万全のサポートを用意するべきだ」と考えたそうです。いずれにしても、ラリーは自分は研究者、又は発明家の道を進んでいる者であり、ビジネスはそのような分野が得意な人に任せればいい、というつもりだったようです。事実、グーグルの親会社となるアルファベットのCEOを退任すると、ラリーは経営を、エリック・シュミットというビジネスの達人に譲りました。

ラリーとセルゲイは学術論文のように他の論文を引用している文書データベースの中で、どの論文が有用かを数学的に決定することは可能かどうかを考えていました。

この場合、他の論文に沢山引用されている論文が、より有用であると言えましょう。

しかし、2つの論文があるとして、どちらも1000の別の論文に引用されている場合、どちらがより有用な論文であると言えるのでしょうか。

ラリーとセルゲイは、この命題を数学的に解決する方法を研究することにしました。これがページランク技術を生み出す元となり、グーグル誕生の発端となります。

2つの論文AとBがあり、どちらも別の1000本の論文から引用されている場合、引用された数だけでは甲乙をつけることが出来ません。しかし、どのような論文から引用されたかを調べると優劣を決定することが出来ます。例えばA論文はアインシュタインやホーキングのような世界的に著名な科学者の論文にも引用されているとします。Bの論文は世間でほとんど知られていない研究者ばかりが引用しているとします。社会にとって、どちらの論文のほうが価値があると言えるでしょうか。
答えはA論文です。研究者はその論文が重要であると考えて自分の論文に引用するからです。

ラリーとセルゲイは、引用とは一種の投票行動であると定義しました。論文が引用された数のみに着目すれば、前記のケースは1000対1000で同点なのですが、この場合、「誰もが一人1票持っているのではなく、影響力のある人は一人で10票でも100票でも持つことが出来る」と考えたのです。

そうすると、投票している人の影響力を数値化し、「本当の投票数」を比較すれば、2つの論文の優劣を決定することが出来ます。