人物

文明批評家としての浅田次郎

去年の4月に青梅市の武蔵御岳山に登り、山香荘という宿坊の看板に「浅田次郎氏ゆかりの宿」という文言を見つけ、店員さんにそのことを尋ねると「浅田次郎さんのお母さんの実家」とのことでした。

以来、何度か宿泊や昼食を食べに行き、店主(浅田さんの甥に当たると推測)に顔を憶えてもらえるほどにはなったかと思いますが、さてどうでしょう。

かねてよりその御高名は存じていたのですが、去年の9月に友人と宿泊することを機縁としてようやく読んだのが『神座す山の物語』と旅行エッセイの『竜宮城と七夕さま』でした。

インターネットの発達によって世の中は便利になったが、そのことにより人々は幸福になったか、あるいは文明は進歩したと言えるだろうか。はなはだ心もとない、と言わざるを得ない。

軽妙なエッセイではギャンブル好きの作家の知られざる日常も紹介されていますが、時折鋭い文明批評のような警句も登場し、昨今で最も売れている作家の面目躍如といった感じがします。

面白いのは、彼は自分の本質を喜劇作家であると認識していることです。

『鉄道員』や『壬生義士伝』といった代表作と目される作品が悲劇的内容であることから、世間では自分を悲劇作家であると評しているようだが、自分としては喜劇作家と認識している、とのことです。

「ル・パヴィヨン・ドラレーヌ」で『壬生義士伝』の執筆をしていた際に、後に映画にもなる『王妃の館』の着想が降りてきたそうで、そのような時は物語のボリュームまで想定出来るそうです。

当方、読みかけている本も多く、なかなか浅田氏の小説を手に取る機会は無いのですが、時には彼の小説を読むのも人生を豊かにする方法の一つであろうと考えるものです。