歴史

過ぎ越しの祭り

ユダヤ人にとって最も重要な祭りは「過ぎ越しの祭り」だそうです。

これは奴隷の境涯にあったユダヤ人の先祖達が、モーセによって率いられ、イスラエルの地に辿り着いたことを祝う祭りです。

紀元前12世紀頃の事と言われていますが、ユダヤ人の家庭では、あたかも昨日の出来事であるかのように身近な話題として語られるそうです。

この時に食べる野菜はマロルやシャゼアーズです。いずれも苦い野菜です。敗北と屈辱に満ちた捕囚生活を忘れないために食べるのだそうです。

「シャローセス」というのは、リンゴ、クルミ、シナモンを葡萄酒でまぶし、すったショウガを加えたものが一般的です。これは奴隷時代に、土木工事の為に漆喰を混ぜ合わせる重労働に従事させられたことを思い出すために食べます。

「ゼーロア」とは牛か羊の骨付きの脛肉を焼いたものです。これは「出エジプト記」の中で神がユダヤ民族を「大いなる力と強き手によって」エジプトから救い出したと書かれていることから「強き手」を表します。

そして、「マッツァ」と呼ばれる小麦粉だけでイーストを入れずに焼いたパンを食べます。
これは、エジプトを脱出する際に、あまりに急いでいたためにイーストを持ち出している時間が無かったという故事に由来します。

なんかリアルでしょう?

私は休日にホームベーカリーでパンを焼くのですが、一度だけドライイーストを入れ忘れた事があります。

そのまま捨てるのが勿体なかったので、膨らまないパンを食べたことがあるのですが、なかなか美味しくないです。

だからその味は知っています。

マッツァは「悩みのパン」とも呼ばれます。マービン・トケイヤー氏は、この「悩みのパン」を口にしない商人は成功しないと断言しています。

人は勝利と栄光を語るに際しては雄弁になりますが、失敗について語る時は寡黙になりがちです。

しかし、ユダヤ人は自らの敗北や屈辱を忘れず、そこから教訓を得ようとしたからこそ、絶えず逆境から甦り、人類に多大な貢献をしたのです。