人物

イザヤ・ベンダサンの正体

結論から言うと、イザヤ・ベンダサンとは評論家の山本七平氏のユダヤ人風のペンネームです。

山本氏はイザヤ・ベンダサンというペンネームで『日本人とユダヤ人』を執筆、ベストセラーとなり、その後もベンダサン名義で複数の著作を刊行、ベンダサン・シリーズは単行本・文庫本の累計で300万部のベストセラーとなりました。

山本氏は「日本教」とも言える、日本独自の宗教・思想・習俗について考察した人です。日本独自の「空気の支配」を指摘したのは彼です。

『日本人とユダヤ人』は、両者の違いについて、それほど学術的に精緻な議論をしているわけではないと言われるのですが、それでもこれだけ売れた理由は、やはり知的好奇心を駆り立てるテーマの設定と、研究者としての情熱が多くの人々に支持されたからだと思います。

尚、山本氏は小室直樹氏との交流があり、小室氏は『ソビエト帝国の崩壊』執筆前は経済的に困窮していたそうで、山本氏が小室氏を手助けしていたそうです。

つまり、山本氏の支援が無かったら、小室直樹は論壇に登場しなかったわけです。

マーヴィン・トケイヤー氏が山本氏にお会いした際、「イザヤ・ベンダサンの作品はあなたがペンネームで書いているのではありませんか」と率直に尋ねたところ、「その通りです。ユダヤ人がユダヤと日本の違いについて論じているという設定のほうが、本名で書くより売れると思ったのです。私の読みに、間違いはありませんでした」、という趣旨のことを語った、とのこと。

山本書店の店主ですから、商売勘定にも余念は無かったようです。