人物

語り部としてのビリー・ジョエル

ビリー・ジョエルは偉大な歌手だが、彼が『ストレンジャー』がヒットするまではあまり売れなかったことや、うつ病に悩まされた半生であったことはあまり知られていないと思う。

JUJUのミニアルバムに『NEW YORK STATE OF MIND』が収録されていた。

非常に思い入れのある曲のようだが、誰が原曲を歌っていたのかは知らなかった。

後年、ビリー・ジョエルの歌であるということを知り、いろいろと彼について調べた。

バンド時代に、リーダーの奥さんと恋仲になる。

そんなこんなで、活動拠点をニューヨークからLAに移したらしい。

しかし、出すアルバムは売れず、生活のためにピアノ・バーで演奏するようになる。

この時の経験が『ピアノマン』として結実する。

LAからニューヨークへ戻ることを決心、その過程が『SAY GOODBYE TO HOLLYWOOD』そして、『NEW YORK STAE OF MIND』に書かれている。

祖父はドイツ系ユダヤ人としてリネン工場を立ち上げ財産を築くが、ナチスの台頭により財産を没収されてしまう。

父の代で難を逃れるためにアメリカに亡命する。

ユダヤ人ということで苛められたので防衛策としてボクシングを習う。

アマチュア選手として戦績は優秀だったが、最後の対戦相手に鼻をへし折られて引退。

壮絶な人生である。

日本公演でのにこやかな笑顔の影で、そのような苦労をしてきたことを知っていた人もいたのだろう。

惜しみない拍手が送られる理由がわかった気がした。