学習

謀略の書としての『老子』

高橋源太郎氏の『真説 老子』によると、『老子』が無為自然の道を薦める哲学書と捉えるのは大いなる誤解であるという。

その意図するところは、自らの安全を確保しながら成功する、この場合の成功とは天下を治めるという壮大な目標まで含まれているが、その方法を指南する、というもの。

高橋氏は、『老子』の著者は複数人いた、と推測している。

複数人であるにせよ、そうでないにせよ、彼らが活躍したのは中国の戦国時代。

当時も数多くの王侯、武人、学者が活躍したが、栄耀栄華を手にして、天寿を全う出来る者はほとんどいなかった、という。

『老子』は、それは何故なのかについて考察する。

その理由は、この天地においては、プラスのものはマイナスになり、マイナスのものはプラスになるという原理がはたらいているからだ、と。

昨今の日本においても、一時代を築いたと目される芸能人であっても、スキャンダルに見舞われ、地位や財産を脅かされている。

それを避けるには、自らマイナスの世界に身を置くことを『老子』は推奨する。

プラスの世界は死地なり、と。

しかし、人生には、プラスの世界に打って出る時期が来る。

そこで大仕事を成し遂げる。

その後は、その地位にとどまってはならない。

事を成した暁には、その場から撤退する。

人の記憶にも、残らなくていい。

これはちょっと面白い。

『老子』って、隠遁生活の薦めなのかな、と思っていたのだが、印象が全く違ってくる。

ちなみに、毛沢東は『老子』を愛読していたそうだ。