音楽

亡き王女のためのパヴァーヌ

僕がこの曲を初めて聴いたのは中学生の時にカシオペアの『4×4』というアルバムを兄が貸しレコード屋さんから借りてきてテープにダビングしたものに収録されており、それが最初である。

ゲストミュージシャンにリー・リトナーを迎えており、今までにないことをやろうということで、収録されたらしい。

アコースティック・ギターの伴奏に主旋律はエレキ・ギターだった。

フュージョンって、こんなにも美しい曲を奏でるのかと感動した思い出があり、その後カシオペアをずっと聞き続けたのは、もしかしたらこの曲が原動力だったのかもしれない。

高校生の時に友人に連れられてとある女子高の文化祭へ行き、吹奏楽部のコンサートを聴いた。

その時に、この曲が演奏された。

僕は即座に、(あ、これはカシオペアのアルバムに入っていた曲だ)とわかった。

しかし、もしかしたらこれはクラシックのスタンダードナンバーであり、それをカシオペアがアルバムに収録したのではないか、ということもおぼろげながらわかった。

調べてみると、ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』という題名である。

パヴァーヌって何やねん?ということである。

服飾品か王女様が好きだったお菓子かな?

ぐらいに思っていた。

今、ネットで調べられる時代なので調べると、16~17世紀にヨーロッパの宮廷で流行したダンス、とのことである。

非常にゆったりと舞う。

この曲で言えば1分間に54拍だから、時報のスピードよりもゆっくりである。

亡き王女とは、特定の人物を追悼したものではなく、今風に言えばイメージ曲であり、「こんな設定で曲作ろうとしたら出来ちゃいました」みたいな感じだろうか。

ラヴェル本人は本曲をどちらかと言えば駄作だと思っていたようである。音楽評論家の間でも、評価はあまり高くない。

しかし今日、世界中でいろんな人がいろんな楽器で、この曲を日夜奏でている。

こんなにも人々から愛される曲になろうとは、ラヴェル自身も予期していなかったかもしれない。

本当に若くして亡くなった、パヴァーヌ好きの王女様が、この曲を守護していらっしゃるのかもしれない。